人の頼みを「断れない」のは、古きよき日本人の情緒的な良さともいえます。
協調精神で場の空気を読み、表立って断らないのは角が立たない美徳ともされてきたところです。
しかし、国際化の時代には、この日本人の美徳は不利に作用してしまうようです。
実は、消費者を保護する法律である消費者契約法においても、「声を出して断らない」消費者は救済されません。
例えば、消費者契約法では、不当な勧誘を受けた場合の消費者の取消権について定められていますが、そこでは以下のような規定があります。
「当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。」
これは訪問販売業者が消費者の家庭を訪問して売買契約をした際に、消費者が「契約するつもりはないから帰ってほしい」と言ったにもかかわらず、販売業者が執拗に勧誘を続けて契約に至ったケースが想定されています。
このような消費者が望まない契約をさせられた場合は、クーリングオフ期間が経過した後でも契約の取消ができるという消費者にとっては頼もしい規定です。
(但し、この取消権は契約を追認できる日から6ヶ月以内に行使しなくては権利消滅してしまいます。)
この強力な取消権も、前提条件として消費者が「退去すべき旨の意思を示す」ことが必要なのです。
つまり、消費者が積極的に「契約するつもりはないから帰ってくれ」とハッキリ言わないと、消費者契約法でも救済してくれないのです。
不審なセールスマンを玄関に入れないことが最大の対策ですが、訪問を許してしまったっ場合には「契約するつもりはないので帰ってください」ということを声に出して言うようにしましょう。
また、訪問販売の当日から8日間あればクーリングオフによって無条件で解約ができます。
必要が無い契約をしてしまったと思う場合は、すぐにクーリングオフの手続をしましょう。