2012年7月13日金曜日

マルチ商法(ネットワークビジネス)の解約

マルチ商法とは、一般消費者に商品(健康食品や化粧品など)を販売する権利(代理店、ディストリビューター)を認めて、販売組織への登録(商品の購入が前提条件となることが多い)を促し、その売上や新規登録会員の獲得数に応じて報酬(リベート、コミッション、ボーナス)を支払う仕組みのことをいいます。
消費者が商品の販売組織に加入して、更に販売組織を拡大するために勧誘を続け、組織の下部人数を増やしていくピラミッド構造を基本形としています。
 マルチ商法という名称の他にも、MLM(マルチ・レベル・マーケティング)やネットワーク・ビジネスと呼ぶこともありますが、内容は同じものです。
 特定商取引法では、マルチ商法のことを「連鎖販売取引」という名称で呼び、その販売方法について様々な規制を行っています。(特定商取引法の条文の中では、マルチ商法という言葉は一切出てきません。)
 
 
マルチ商法の勧誘を行う際には、重要事項を記載した概要書面を交付することが義務付けられています。
 また、実際にマルチ商法の契約をする際には、全ての商品情報を記載した契約書面を交付することも義務付けられています。
これらの書面の交付を怠ったり、記載義務事項に不備があると、クーリングオフ期間を経過していても販売事業者はクーリングオフによる解約を受け入れなくてはなりません。
 
 
連鎖販売取引(マルチ商法)のクーリングオフ
連鎖販売取引(マルチ商法)のクーリングオフ期間は、「契約書面の交付日」もしくは「商品の最初の引渡し日」のどちらか遅い方を起算日とします。その起算日より20日間であればクーリングオフが可能となります。
 
連鎖販売取引(マルチ商法)の中途解約
連鎖販売取引(マルチ商法)のクーリングオフ期間が過ぎてしまった場合でも、一定の条件によって特定商取引法の定めた基準での中途解約が可能となります。
 連鎖販売取引の契約を中途解約する場合には、販売組織からの脱会(連鎖販売取引契約の解除)と商品売買契約の解約の二つの解除手続をすることになります。(クレジット契約をしている場合は、クレジット会社にも解約の通知をする必要があります。)
 
(1)販売組織からの脱会(連鎖販売取引契約を解約)する場合の違約金の上限
 販売組織からの脱会をする際に発生する違約金については、以下のように上限が定められています。契約書にこの基準を超える違約金が記載されている場合でも、以下の基準が優先されます。消費者が代金を先払いしている場合は、下記の違約金の金額を差し引いて返還請求をすることができます。
 
商品が引き渡しされていた場合(サービス提供後)の違約金
・契約の締結および履行のために通常要する費用の額
・消費者が商品を販売して利益を上げた金額(特定利益の金額)
・消費者が受け取った(返品ができない状態の)商品の金額
・上記に対する法定利率による遅延損害金
※上記を合算した金額が違約金の上限となります。
 
商品の引渡しがされていない(サービスが開始されていない)場合の違約金
・契約の締結および履行のために通常要する費用の額
・上記に対する法定利率による遅延損害金
※上記を合算した金額が違約金の上限となります。
 
(2)商品販売契約の解約
 連鎖販売取引契約を解除(販売組織を脱会)した場合には、以下の5つの条件が全て揃うケースについては、消費者が商品の販売契約も解除して返金請求をすることができます。
 
<条件1>販売組織への入会後1年未満
<条件2>商品を受領して90日未満
<条件3>商品を再販売していないこと
<条件4>商品を使用又は消費していないこと
<条件5>商品を棄損していないこと
 
この5つの条件を全て満たす場合に限り、下記のように返金を請求することができます。
 
商品が未使用であり、その全てを返還した場合
 ※商品金額の10%分を違約金として差し引き、残りの90%分を返還請求できる。
 
商品の引渡しを受けていない場合
 ※法定利率による遅延損害金を違約金として差し引き、残りを返還請求できる。
 
商品を返還できない場合
 ※商品の販売金額と法定利率による遅延損害金を合算した金額を違約金として差し引き、残りを返還請求できる。